西島さんが山へ山菜採りに訪れるうら若き乙女を巨大化、高笑い、突風などで脅かして、
大自然と自由人の威厳を保つという仕事をする為に、
朝、西院の豪奢な集合住宅からオートロックを解き放ち、三条通りまで出て、
そこから三条会商店街という、どこか大阪的な匂いのする商店街を抜けてゆく。
その西側の入り口に、
「ラーメンは一乗寺 パチスロは中京区」
と書かれた、それはもう心外な垂れ幕がかかっている。
心外すぎて、すんなり受け入れてしまいそうになる。
一乗寺は確かに全国からスープパスタファンが訪れるほどのラーメン大国である。
「ラーメン通り」という異名をもつ通りがあるほどだ。
東大路通りと言えば、北大路から南側のことである。
東大路はその北からラーメン通りになる。
地図にも載っている。
一説によると、岩倉具視が日本地図を作成した時からであるという。
しかし、どうだ。
中京区よ。
一乗寺は国一つであるにも関わらず、
こちらは連合国のように広い国土を持ちながら、よりにもよって、
「パチスロ」でかの地と事を構えようというのか。
負けるぞ。
例え勝っても嬉しくはない。
きっと顔が真っ赤になるに違いない。
「ラーメンは一乗寺 パチスロは中京区」
そんな事を西島は認めた覚えはない。
中京区役所の人もきっと泣いている。